愛犬や愛猫と一緒に暮らせる「ペット可物件」は非常に人気がありますが、退去時に最もトラブルになりやすい賃貸ジャンルでもあります。退去時に提示される清算書を見て、「敷金を2ヶ月分預けていたのに1円も返ってこず、さらに追加で30万〜50万円を請求された」と絶句する飼い主が後を絶ちません。
まず把握すべきは、ペット可物件における退去費用の適正な相場水準です。間取りとペットの飼育頭数ごとの目安は以下の通りです。
| 間取り | 一般的な退去費用相場 | ペットによる主な補修項目 | 敷金償却との関係 |
|---|---|---|---|
| ワンルーム・1K | 50,000円 〜 120,000円 | 壁一面クロス張替え、オゾン消臭、巾木補修 | 敷金1ヶ月償却の範囲内に収まることが多い。 |
| 1LDK 〜 2LDK | 120,000円 〜 250,000円 | リビング・廊下のクロス張替え、床コーティング、ドア枠補修 | 追加請求が5万〜10万円発生しやすい分岐点。 |
| 3LDK以上(ファミリー) | 250,000円 〜 450,000円 | 複数部屋のクロス・CF張替え、柱のパテ埋め、全体消臭 | 悪質業者の場合、平気で60万〜100万円超を請求してくる。 |
契約時に「ペット飼育の場合は敷金1ヶ月積み増し(償却)」という特約を結んでいる場合、その償却された敷金はそもそも「ペット飼育に伴う損耗や消臭の原資」として充当されるべきものです。償却分を丸々大家の利益にした上で、さらに全額を追加請求してくる「費用の二重取り」は法律上許されません。
ペット飼育で特に問題となるのが、壁の角、柱、木製巾木(はばき)、ドア枠に対する爪とぎ傷や噛み跡です。これらは借主の「ペット管理責任(善管注意義務違反)」となるため、補修費用は借主負担となります。
しかし、問題はその「補修工法と請求範囲」です。良心的な業者であれば部分補修(パテ埋め+木目調ダイノックシート貼り)で1箇所あたり15,000円〜25,000円程度で修復可能です。ところが、悪質な管理会社は「柱一本丸ごと交換(建具枠交換)」として1箇所10万円以上を計上してきます。
トイレの失敗による床のシミやアンモニア臭も高額請求の温床です。
床材がクッションフロア(CFシート)の場合、耐用年数はクロスと同じく「6年減価償却」が適用されます。何年住んだかによって借主の負担割合は減額されます。一方、複合フローリング(木製フローリング)の場合は耐用年数は建物と同じですが、「傷んだピース(板)単位または部分補修」が原則であり、部屋全体の床全面張替え(30万〜50万円)を借主に押し付けることは判例上否定されています。
退去見積書によくある「ペット消臭消毒料:80,000円」などの項目。専門のオゾン発生器を用いた強力脱臭作業の適正相場は20,000円〜35,000円程度(ルームサイズに応じる)です。ルームクリーニング費用(4万〜6万円)とは別に法外な消臭代が二重計上されていないか必ず確認してください。
ペット可物件の退去立ち会い時は、査定担当者が「ペット飼育=なんでも借主負担」という先入観を持って極めて厳しくチェックしてきます。
立ち会い時には、必ずスマートフォンで部屋中の動画と静止画を撮影しながら回りましょう。「この壁の汚れは入居当初からあった」「この傷はケージを置いていた範囲外でありペットとは無関係」「クロスは減価償却で計算してください」とその場で口頭指摘し、相手が提示する「退去立ち会い確認サイン欄」には絶対にその場で署名・捺印してはいけません。「後日、項目別の見積書を精査した上で書面にてご返答します」と伝えて持ち帰るのが鉄則です。
京都を拠点に不用品回収・遺品整理・空き家対策・生活インフラ支援を展開。現場の第一線で培った実務ノウハウと正確な法令・税制データに基づき、暮らしの不安を解消する実践的ガイドを発信しています。